もう、「先代」と頭につけてお呼びすべき友綱親方

またおひとつ、お誕生日おめでとうございます。

わたくしも、同じ日(ただし親方の数十年後)に生まれておりますので
忘れることがなんとも困難です。

残念ながら、親方の現役時代のことは存じあげないのですが、
親方に関しまして、なんといっても忘れられないことがございます。

それは魁聖関が入幕して間もない頃の、
秋場所前の稽古総見のことでございました。

十両力士のぶつかり稽古に胸を出し、土俵を下りた魁聖関を、
親方が待ち構えていて何か棒のようなもので叩き、声高に叱りつけたのです。

不特定多数の衆人環視の中、
どれだけ勇気の必要な行為だったことかと存じます。

それでも、今この時教えなければならないという、
深い覚悟の厳しさ、潔さを感じました。

そして、魁聖関の、叱責に素直に頷いて謝罪し、
その後、横綱の稽古中の土俵をにらみつけ、
一人黙々と四股を踏んでいたお姿も。

体育会系の理屈が通じる世の中では最早ない、
だがこの師弟は確かに通じ合っている
そこに至るまでの理由がちゃんとある

理屈や内容や方法ではなく、心として伝わるかなのだと、
深く感じいりました。

それ以来、わたくしは魁聖関のお姿を、
毎場所楽しみにするようになりました。

友綱部屋の稽古見学にもお邪魔し、親方や王湖さんの、
若者たちの指導に当たるお姿を拝見し、似たようなことをまた考えました。

つまり、力士の育成のみならず、
ひとりの一般人の世界をぐいと広げていただきました。

ありがとうございます。

袖摺りあう程度のそれですら、ございませんが
それでも、ご縁に感謝せずにいられません。

月並みではございますが、今後のご活躍をも、心より願っております。

栄 寛子